毎年のように新たなルールが導入されるNLB。米国ではアメリカンフットボール(NFL)やバスケットボール(NBA)が国民的スポーツであり、ベースボールの人気も低迷しつつある。野球は投球間が長かったり、サインの煩雑化などで3~4時間かかるゲームも多く、現代社会のテンポに合わないとされている。
近年こそWBCや大谷翔平フィーバーで観客動員数も増加傾向にあるが、MLBと選手会の間ではその危機感から改革の意識が高く、毎年のように新ルール改正の試みがファームで実験され、実際に使えそうなら導入という動きにある。
「ゴールデンアットバット」とはどのようなルール?
1試合に1度だけ、好きな選手を好きなタイミングで打席に立たせることができるというルール。
米メディア「ジ・アスレチック」のジェイソン・スターク記者は、「7回以降に限定する」や「負けているチームに限定する」など、権利を行使できる場面を限定したうえでの導入についても言及している。
あくまでも議論の途中であり、実際にはファームでの実験を経ての導入になるはずだが、現時点ではまだ具体的な実行には至っていない。
・打順の巡りも野球の醍醐味の1つなので、そういうドラマ性が失われるのは寂しい
・年間162試合すべてでゴールデンアットバットを行使されれば、打撃成績のシーズン記録をガラッと変えてしまう可能性も危惧される
・試合がスリリングになり面白い
などコメント欄での意見は様々でしたが、「本来のあらかじめ決めた打順」も含めて野球の面白さという声が多く、反対派が上回っている印象。
2020年の主なルール改正
※以下、ルール改正は「https://www.tsp21.com/sports/mlb/feature/rule2023.html」より抜粋。
- ベンチ入り 26人枠 (アクティブ・ロースター)
8月 31日までのアクティブ・ロスターを 25人から 26人に拡大。この間の投手登録は最大 13人。 9月の拡張ロスターを 40人から 28人に縮小。この間の投手登録は最大 14人。 選手は開幕前に投手か野手のどちらかに登録される。
- 野手を投手起用できる 3条件
7点差がついている。延長戦。選手が「2ウェイ・プレイヤー」の資格を有している。
- 2WAYプレイヤー
選手がそのシーズンか前シーズンに 20回を投げ、野手またわ指名打者として 20試合出場している場合、 2WAYプレイヤー(二刀流)の資格を得る。
- 故障者リスト
故障者リストに入っている期間は投手が最短 15日間、野手が最短 10日間。 脳震盪による故障者リスト入りは最短 7日間。
- 投手の 3打者投球義務
投手は登板した回が終了するか、負傷降板しない限り、 3人の打者に対して投球しなければならない。
- チャレンジ要求の時間
チャレンジ要求するための時間を 30秒から 20秒に短縮。
2021年の主なルール改正
- 粘着物質使用の取り締まり
投手が粘着物質(スパイダータック、ワセリンなど)を使用した痕跡がある場合は退場処分とし、10試合出場停止とする。 審判団は試合中に身体検査を実施。(2021年 6月 15日に発表)
- 7回制のダブルヘッダー
ダブルヘッダーを 7回制で実施する。 5回未満で中断した試合は7回までで終了する。
- タイブレーク制
延長戦は走者を2塁において開始するタイブレーク制を継続する。
- ベンチ入り 26人枠 (アクティブ・ロースター)
ベンチ入りを 2019年までの 25人から 26人に拡大。
2022年の主なルール改正
- 大谷ルール
打順に入った先発投手が降板後も指名打者として打線に残ることができる。 打順に入った先発投手が指名打者として代打を送られた後も投手として登板を続けることが出来る。
- タイブレーク制継続
延長戦を無死2塁からスタートするタイブレーク制を廃止せずに継続する。
- 両リーグ指名打者制
指名打者制をアメリカンリーグだけでなく、ナショナルリーグでも導入する。
- プレーオフ枠拡大
これまでの 10チームから 12チームに拡大。 各リーグで 3地区の優勝チームと勝率上位 3チーム(ワイルドカード)がプレーオフに進む。 プレーオフ 1回戦は各リーグで地区優勝の勝率上位 2チームがシードされる。
- ダブルヘッダー 9回制
過去 2シーズン採用されていたダブルヘッダー 7回制を廃止して 9回制に戻す。
2023年の主なルール改正
- ピッチクロック
試合時間短縮のため、投手が捕手からボールを受け取ってから、投球するまでの時間を制限。 走者なしで 15秒、走者ありで 20秒とする。投手が違反した場合はボールカウントが増える。 打者は残り 8秒までに打撃体勢に入ることが求められ、違反するとストライクカウントが増える。
- 牽制球
試合時間短縮のため、投手による牽制球をプレートを外す行為を含めて 2回までとし、3回目はアウトを取れなければボークとする。
- 打者によるタイム
試合時間短縮のため、打者が 1回の打席でとれるタイムを 1回のみに制限。
- 守備シフト禁止
内野手が守備位置を極端に変更す戦術を禁止。 2塁ベースを境に両サイドに2人ずつを配置するように規制され、 外野に下がって守備することは許されない。
- ベース大型化
塁上での衝突防止のために1~3塁ベースを大型化。 これまでの 15インチ(38センチ)四方から、18インチ(46センチ)四方に変更する。
- タイブレーク制継続
2020年から採用された延長戦を無死2塁から開始するタイブレーク制を廃止せずに継続する。
- 野手の投手起用
野手の投手起用条件を厳しくし、 昨年の「6点差以上」から 「リードされているチームは 8点差以上」、 「リードしているチームは 10点差以上の9回のみ」となった。 延長はこれまでと変わらずに無制限。
2024年の主なルール改正
- ピッチクロック短縮
投球するまでの時間を制限(ピッチクロック)を走者ありの場合、20秒から 18秒に短縮。 走者なしの場合は 15秒のまま。 死球後は投手が新しいボールを受け取ったらすぐにピッチクロックを始動。 これまでは投手がマウンドに上がってから始動だった。
- コーチのマウンド回数削減
コーチがマウンドに行ける回数を 5回から 4回に削減。 ただし8回までに 4回を消化した場合、9回は特別 5回目が許される。
- ランナーズレーン拡大
一塁に走者が走るランナーズレーンをファウルラインの内側に 18インチ(46センチ)から 24インチ(61センチ)の間で拡大。 2019年のワールドシリーズでナショナルズのトレイ・ターナーがラインの内側を走ったことで守備妨害を取られた問題を改善した。
- ウォームアップした投手の投球義務
イニングが始まる前にマウンド上で投球練習した投手は交代できずに最低 1人の打者に対して投球する義務が発生する。
ルール改正はファンの為だけでなく選手ファーストでもあってほしい
ピッチクロックや牽制球、極端な守備シフトの禁止、ベースの大型化など、近年はやや野手優先ともみられるルール改正が多いように感じる。
もちろん、長すぎた試合時間を短縮することは見ているファンも楽しめて、選手の体力にもプラス要素があるのは理解できるが、同時に近年は投手の怪我が多すぎるのも気になるところ。
ダルビッシュ選手も、どうしても「点をとる野球が面白い」風潮にあり、ファン獲得化のために投手よりも野手ファーストに見えてしまうルール改正も多いと意見していたことも。
選手会と話し合って決めていることなので何も言えないが、ナイスピッチングのしびれる投手戦も十分に面白いと感じるのは、日米の違いなのかもしれない。