ドジャースはワールドシリーズ第2戦で左肩を怪我した大谷翔平が、関節唇断裂の修復手術を受けたことを発表した。
「亜脱臼」と発表されて、ワールドシリーズにも出続けていた大谷翔平選手ですが、実際は関節唇断裂だった。
執刀医は2018年のトミー・ジョン手術、2023年の右肘靭帯損傷の際にも執刀した、ロサンゼルス市内のカーラン・ジョーブクリニックのニール・エラトロッシュ医師。トミー・ジョン手術を初めて行ったフランク・ジョーブ博士に師事し、認められた名医。全米のプロスポーツ選手で大きなけがをすると頼りにされることが多い。
気になるのは、心待ちにしていた投手としての開幕に間に合うのかどうか。
シーズン中からカーショー投手も大谷投手のリハビリに遅れが生じていることには触れていました。
個人的には2025年3月18日に東京ドームで行われるカブス戦での開幕投手を務めて欲しかったので残念な気持ちですが、今はしっかり治療に専念して欲しいですね。
関節唇(かんせつしん)ってなに?肩関節と関節唇の仕組み
肩関節は上腕骨(じょうわんこつ)と肩甲骨(けんこうこつ)から構成されています。
上腕骨の上端部分は上腕骨頭(じょうわんこっとう)と呼ばれ、丸い形をしています。
他方、肩甲骨にはお皿の形をしたくぼみがあって関節窩(かんせつか:グレノイドともいう)と呼びます。
肩関節は、上腕骨頭が関節窩の中を回るように動くことによって機能しますが、他の関節に比べて接触が浅く不安定なので、関節唇(かんせつしん)と呼ばれる軟骨組織や、多くの筋肉や靱帯によって支えられています。
肩関節のしくみ https://www.kansetsu-itai.com/about/shoulder/sho002.php
手術が必要な状態でスタメン出場し続けた理由は?
大谷投手は左肩を怪我しながらも、第3戦以降もスタメン出場し続けました。スイング後の痛みを我慢する顔は見ていて辛かったですね。
第2戦での負傷後、ベンチ裏で治療を受けていると、ナインが次々と心配顔で状態を尋ねてきたそう。
大谷投手も「士気だけは下げたくなかった。みんな必ずしも万全の状態で出ているわけではない」と言い、フリーマンはじめブルペンにも怪我人続出の中、自分のせいで流れを変えるわけにはいかないと思ったのでしょう。
本来のスイングができずに強行出場はワガママなどの声もありましたが、優勝後の本音では「もうダメかと思った。チームやみんなが必要だと言ってくれたので頑張れた。」という言葉が印象的で、選手生命に関わる致命的な怪我でない限り、シリーズなどの大事な試合に強行出場する一流選手は少なくはない。
でも実際はかなり痛くて手術が必要な状態だったんですね。リハビリ中にさらに重なった怪我は、大谷投手も初めての経験。決して夢見た舞台に出たくて出たような単純な話ではなく、打席に立つ「存在感」でヤンキースに焦りや恐怖心を生み、チームの勝利に貢献できたことは間違いないでしょう。
開幕には間に合う状態なのか?
球団の発表によるとリハビリに必要な期間などは明らかになっていないが、来春のスプリングトレーニングには間に合う見込みとなっているそうだ。
結果的に昨年9月に行った右肘靭帯の修復手術に続いて2年連続での手術となってしまった。
もともとブルペンでの投球練習を再開していましたが、ワールドシリーズまで進出したこともあって、まずは目の前の試合に集中しようとバッターを相手にした投球練習までは行っていませんでした。
問題は、今回の怪我が右肘靭帯のピッチャーとしてのリハビリにどれくらい影響するのかというところ。
負担の少ない関節鏡視下手術とはいえ、一般的に競技復帰には4カ月程度かかる。キャンプ序盤は、再発防止へ走塁などの練習メニューの一部に制限をかけそうだ。
米メディアは懸念を示す報道も目立ち、米ヤフースポーツは「ドジャースにとって直近の同じ故障は、不吉なものだった。コディ・ベリンジャーが2020年のリーグ優勝決定シリーズでホームランを打った際、右肩の関節唇を断裂。オフの11月に手術を受けて翌春のキャンプは参加したが、それ以降の成績は急落。22年シーズン後に戦力外となった」と伝えた。
米スポーツ専門局ESPNも4年前のベリンジャーのけがとそれ以降の不振を伝えた上で、「だが、ベリンジャーの故障は右肩で、左打者にとっては打撃をリードする側だ。大谷の故障は左肩で、影響はより少なくて済むと考えられる」とも。
ベリンジャーはドジャースの主軸として2020年のポストシーズンに出場。リーグ優勝決定シリーズの第7戦で、左打者の前腕にあたる右肩を亜脱臼した。ベリンジャーは痛みに耐えつつ出場を続け、ワールドシリーズ第1戦では決勝2ランを放つなどチーム7度目のワールドシリーズ制覇に貢献した。
ベリンジャーは亜脱臼による右手関節唇断裂のため11月に手術を行い、開幕戦には間に合う予定だったが、翌シーズンの年間打率は.165に急落。2022年シーズン終了後に再契約が結ばれることはなかったという。
大リーグ7年目でこれが4回目の手術となった大谷選手は、これまで手術のたびに「思い切りパフォーマンスを出せないと自分が納得しない」という自身が大切にする考え方をNHKのインタビューで語ってきました。
大谷選手の1回目の手術は、大リーグ1年目の2018年、10月に行った右肘靭帯の修復手術でした。
このとき、24歳だった大谷選手は「普通に投げればそれなりに92、3マイルは(149キロ前後)投げられる状態なのかなと思うが、それが自分本来のピッチングなのか、楽しいのかなと思ったときにそうではないと思った」と手術を決断した理由を明かしました。
バッターに専念した2019年には9月に痛みが出ていた左ひざの骨の一部を取り除く手術を受け、去年9月には再び右肘の靭帯を修復する手術を受けました。
ドジャースに移籍したあとの去年12月のインタビューの中でも、大谷選手は手術を受けた理由について「自分が思いきりパフォーマンスを出せる感覚がないと、単純にうまくもなれないし自分が納得しない。ごまかしながら投げてもおもしろくないんだろうなというのはある」と話していました。
その上で「たぶん手術をしなくても感覚的には93、4マイル(150キロ前後)ぐらいだったら普通に投げられる感じだったが、たぶん100マイル(160.9キロ)とか、それを超える球速に耐えられるかと言ったら、たぶん耐えられなかったので手術の決断をした」と5年前と同じ言葉を口にしていました。
肩の関節の脱臼は、1度起こすと関節が不安定になり再び脱臼しやすくなるとされていて、パドレスのタティースJr.選手はホームラン王を獲得した2021年に左肩の亜脱臼を少なくとも4回起こし、翌年の2022年に手術を決断しました。
このときの執刀医は今回の大谷選手と同じで、タティースJr.選手は全治4か月から6か月とされ、9月に手術を受けたあと復帰は翌年の4月20日だったためシーズン開幕には間に合いませんでした。
ドジャースは今回、大谷選手が来年2月のキャンプには間に合うという見通しを示していますが、手術を決断した背景には、高い強度のパフォーマンスを続けられる体を維持することを大切にする、大谷選手の変わらない価値観があるとみられます。
バッターとしての開幕はおそらく問題ないと言われていますが、例え今回の怪我がなかったとしても2025年も球数制限があるはずですので、投手としての最高のパフォーマンスは2026年に期待ということになるでしょうか。
まずは回復に専念し、くれぐれも無理はしないで欲しいですね。